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硬式テニスの得点の数え方を知っていますか。ラブ、フィフティーン、サーティ、フォーティ(フォーティファイブのなまり)、ゲームと数えますから15きざみです。シンデレラの物語では、少女は王子さまの舞踏会の第1日目には時計が11時45分の時を打つのをきいて約束通
りに帰ってきました。第2日目には楽しさのあまり気がついたのは一二時ちょうどのチャイムの鳴りはじめでした。そしてガラスの靴を片一方残してきてしまいます。この話はどこの国のいつ頃の話でしょうか。ここではテニスとシンデレラに共通の「15」について考えてみます。
シンデレラの物語がフランスの童話作家ペローによって世に出たのは、17世紀末(1697年)です。物語の中に顔につけぼくろをするところがありますが、このファッションが流行したのは一六世紀ですから、この間の話ということになります。舶来のイギリス製のレース飾りをつけるということからはヨーロッパ本土でしょう。オレンジやレモンが非常に珍品として描かれていますから、これらの育たないところです。でも馬車に利用したカボチャや、二十日鼠〔ハツカネズミ〕、トカゲが成育できるくらいの気候の土地柄です。そしてそのころにガラス工芸がボヘミア地方で盛んになったことなどを考え合わせるとドイツ、チェコスロバキアを含む、かつて神聖ローマ帝国とよばれた国々のうちにしぼられてきます。
ドイツの時計の研究によれば、16世紀中頃から17世紀中頃の多くの時計は、1時間ごとの時報だけではなく、15分ごとにもチャイムが鳴る仕掛けになっていたということです。そこで、シンデレラが第1日目に仙女のおばあさんとの約束の時間に遅れない正確な時間を知ることができた訳が分かります。
ではなぜ15分毎だったのでしょうか。テニスの15分刻みと同じなのでしょうか。1579年、ゴスランというフランス人が、当時、ジュ・ド・ポーム(Jeu
depaume 手のひらの競技)とよばれていたテニスの得点の数え方についての書物を出しています。いろいろな角度から検討をして、彼はつぎのように結論づけています。「一つの試合を全うするということは、一日の農作業をなしおえるのと同じように、神様の豊かな恩恵によるものである。1日にできる農作業の面積(240歩分)を一試合に見たてて四分割するとそれは60歩に相当する。これをさらに四分割するとき、15という数字が出てくる」というのです。
一時間を60分とし、これを四分割する方式は、古代バビロニアの60進法と、占星術に出てくる四分の一対座の考え(Quartile)にもとづくと考えますが、ここに共通点がありそうです。
フランス大革命で有名なテニスコートの誓い(球戯場での誓い)がルーブル宮殿で行われたことでも分かるように、テニスの原形はフランス王室の寵愛をうけて発達してきました。そこでは一つ、二つと小刻みにではなく、あたかも農民がコツコツと働いてためた収穫物を貴族たちが搾取するかのように、15きざみの得点を与えたのです。
また、当時には、人々の生活時間を貴族階級が不定時法のもとに不正に支配することすら行われていました。コツコツと刻む時を大切にする庶民と、ゆっくりのんびり大雑把に時間を扱った支配階級の人々の時間への姿勢の違いを、この「15」ははっきりと示しています。
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