関西学院健やかの歴史

はじめに
1999.12.30

 「不思議の国のポプラ」、上ケ原キャンパスにはばたくポプラにこのような名をつけることを許して欲しい。
1865年、ルイス・キャロルによって作られた童話、Alice'sAdventuresinWonderland で主人公のアリスは兎を追って穴に落ち、 地下の反社会でチャ−シ−猫、気違い帽子屋、三ケ月兎、まがい海亀などの奇妙な連中に出会う。最後はハ−トのキングとクイ−ンの不条理な裁判にアリスが反抗したところで彼女は目が覚める。

 上ケ原キャンパスのポプラは、アリスのような夢をみている。 上ケ原キャンパスはワンダ−ランドである。時計台からカリオンの響きがキャンパスに流れる。その高い音色にのって背に小さな翼をつけた天使があらわれ神の声を伝え、ときには小さな弓矢をもったキュ−ピットがあらわれて幸運を授けようとする。静かな夕暮れ時に、 上ケ原キャンパスの借景の甲山神呪寺から鐘の音が聞こえてくる。「ゴ−ン」という地を這うような低音にのって羽衣をまとった天女が舞いおりてきそうでもある。ときには甲山から天馬ペガサスが飛びきたり、古代中国の麒麟がやってくる。アラビアンナイトの空飛ぶじゅうたんに乗ったタ−バンの人も、きんと雲に乗った孫悟空もやってきそうである。

 関西学院は、すべての人々に開かれた国際交流の学びの場である。空を飛ぶのに翼をつかうヨ−ロッパの具体性と、身にまとう薄絹や雲をつかって空をいくオリエント、日本の表象性が混在しているのが、関西学院のキャンパスである。それはキリスト主義を建学の精神として、コスモポリスの神戸にうまれた関西学院の素晴らしい素地である。

 しかし、その関西学院大学には不思議なことがある。

 キリスト教主義を建学の精神とするとしながら、クリスチャンの教授は意外に少ない。国際交流を標傍するわりには、海外からの受け入れ学生数は極端に少ない。英語に強いといわれた学院の評判はすでに薄れている。卒業生教授の比率が多すぎないという大学社会の常識を破ってOB教授が多い。女子学生の比率増加にまったく見合うことのない女性教授数などという不備が指摘されずに放置されている。

 関西学院大学は奇妙なワンダ−ランドである。そしてこのキャンパスでは、トランプカ−ドの不見識なゲ−ムが行われている。
 ポプラは嘆いていることであろう。
 100年の歴史の中で育まれてきた学院の本当の姿は何なのだろう。 心とからだをもつ学院そのものはどこに行こうとしているのだろうか。物をつくる時代ではない。関西学院が得意としているはずの、心をつくる時代である。ここまでの歩みを見直しながら、時代にマッチした、はっきりとした目標づくりを早急にしなければならない、とポプラは考えていることであろう。
 ポプラに反抗させて、目が覚めるのを待つ姿勢のような関西学院であってはならないと考える。それは決して、地下の反世界の物語ではなく、生き生きとした現実世界の中での着実な関西学院の歩みが求められるからである。


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