新・健康文化考

「秘策操体術 足裏刺激系」
新世紀42号(2004.6.30)


「こちょこちょしよう!」

 眠っている赤ちゃんの足裏をそっと触ってみると… …。赤ちゃんは足を縮めて、刺激を避けようとします。よちよち歩きができるようになった幼児が目覚めているときに、足裏をそっと触ると、「こそばいっ!」といって笑います。「こちょこちょこ」するよ、という言葉だけで笑って逃げようとします。こそばゆい(こそばい)というのは西日本の子どもたちで、一般にはくすぐったいという表現が使われます。このくすぐったいという感覚はからだの表面でいつもは太陽の光や空気の流れから遠ざけられている足裏や腋の下に特異的に存在するようです。

 そして、この感覚は子ども時代にもっとも感度が高く、大人になるにしたがって感度が低下するような傾向にあるようです。老人では言葉だけでは、くすぐったいという感覚を思い出せないようにすらなります。感覚情報の加齢性減退です。

 視覚、聴覚、嗅覚、味覚皮膚感覚の5つの感覚情報は五感と呼ばれます。前の4つは、光・音・匂い・味を感じます。最後の皮膚感覚は、触覚(機械的接触)、温覚(温度上昇)、冷覚(温度下降)、痛覚(強烈刺激)に分けられます。

 くすぐったい感覚は機械的な接触によるものです。接触感覚は、真皮・表皮内に分布する知覚神経自由終末、真皮の神経乳頭内にある触覚小体(マイスネル小体)、皮下組織内にある層板小体(パチニ小体)が感知します。これらの感知器は廃用性機能不全がおこります。

 「こちょこちょこ」するよ、という言葉だけで反応するのは、中枢神経系での想定学習効果が、末梢神経の感知機能を亢進させるものと考えられます。太陽の光や空気の流れから遠ざけられている足裏や腋の下に特異的に存在するくすぐったい感覚帯からの情報は、中枢神経系の学習機能を賦活させる効果があります。また、幼少時の高感度の感知器の機能を復元させるように働きかけると考えられます。

 そこで秘策操体術 足裏刺激系を登場させる必要があるのです。市街地ではフットケアとかフットマッサージという名の癒し処が出現しています。足裏・指間部などを丁寧に手指で撫でさすり、皮膚感覚を刺激しながら血行を良くし、ほどよい安らぎを与える健康産業です。充分な経費と時間に恵まれた人には好都合なものでしょうが、能動的に積極的にセルフケアを心掛ける人に適したものではありません。

 自立しようとする人は、心とからだを自分で管理するものです。ここで基本となるのは、@片足の足裏を逆足の膝上に乗せて、両手指(拇指)で指圧することです。足裏には、湧泉、足心というツボがあります。土踏まずの上の方です。足裏にはたくさんの骨が寄り合っています。これをまとめている靱帯があります。ゆっくりと多くの部分に優しい思いの指圧を施したいと思います。

AB手指での指圧ができにくい状況下では、ゴルフボールを踏みつける方法がお勧めです。2つのボールをうすいストッキングなどに入れ、お互いを離して固定した指圧式ボールを自作しておくと、両足を同時にマッサージすることができ、また転がっていくのを防止する手だてとなります。


C足指の運動機能を回復させるために、足指で小さなボール状のものやハンカチなどの布切れを掴み・離すことを繰り返します。大脳皮質の運動野・足指支配領域の活性化を促す効用があります。 

D靴履き生活のために、足指は閉ざされ、押しつけられた可哀相な存在になりがちです。系統発生学的には手指と相同の器官ですから、器用な指使いができるはずのものです。手指と足指の指々組み合わせをして、機能復活と形態復活を試みてみましょう。

 大人になるにしたがって感度が低下するような傾向にある足裏感覚に関心をもち、この部分の機能低下を回復させようとする努力が、着替え・摂食・排泄などの日常生活において自立を望む人たちには必要不可欠な操体術であります。
 
 


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