新・健康文化考

あっ…危ない! ブレ−キは万全か?
新世紀2号(2001.2.28)

 哺乳類の中で短距離走ナンバ−ワンのチ−タ−が、草原で獲物のレイヨウを追って狩りをする場面をテレビでみかけることがあります。チ−タ−の走力は時速113キロメ-トル、レイヨウは97キロメ-トルといわれます。

 この速度対比からすれば、チ−タ−の狩りはいつも成功することになりますが、ここで、レイヨウはチ−タ−の高速走行が約320メ-トルまでという短期型であることを知っているらしいのです。スタミナに勝るレイヨウは、逃走する進路を急激に変えることを繰り返して、捕食者の追跡時間を長くさせます。やがて、チ−タ−はスピ−ドダウンしてきて、レイヨウは追跡を振り切ることになるのです。

 進路を急に変えるためには、身のこなし技術が要求されます。それには推進力に見合いの制動力があることと、上体と脚部の捻じれバランス能力が充分に身についていることが重要な要点となります。とくにここでは、制動力に注目したいと思います。

 動物の行動を考えると、彼らはつねに効率第一、安全第一で生きていることが思い浮かんできます。個体の維持と仲間の安全のために必要なことはしますが、無駄 なことはしないのがその生態的特徴です。それなら、その駆動力は制動の利く範囲に違いないと思うのです。レイヨウのスピ−ド対応のブレ−キはどうなっているのでしょう。きっと、衝撃吸収に優れた肩・股関節相当部分と、しなやかに左右に捻じれる胴体部分、そして前後方向の衝撃を吸収する頚部、これらの働きにその秘密が隠されているにちがいありません。

 ここからは、駆動力は制動の利く範囲ということを前提に、話を進めさせていただきます。赤ちゃんがよちよち歩きをはじめた頃の足運びは、きわめて慎重です。でも、やんちゃ坊主とよばれるほどになると、スピ−ドを出し過ぎてぶつかったり、転んで泣きべそをかくことになります。

 駆動力を行動力に置き換えると、行動力を増すためには、制動能力を高めることがまずはじめに成すべきことであることが分かります。自転車、バイク、自動車のブレ−キは、その走行性能に応じて高級なものが使用されています。高層ビルほどしっかりした基礎工事をします。高度秘密情報ほどしっかりとしたセキュリティに委ねます。

 安全を確保することで、物事の発展度は大きくなります。足元の強度を見直すことが大切です。心とからだに降り掛かってくる突発的な衝撃に対して、それを回避したり、軟着陸させたり、利用したりするほどの技術が身についてくると標題のことばに「大丈夫ですよ!」と応える余裕がでてくると同時に、より一層ハイレベルな活動が可能になると考えるのです。駆動力を高めるために、制動力をつけるという発想は、スポ−ツ選手にも、企業経営者にも、自由業の人間にとっても大切なことだと考え直して欲しいのです。


Copyright 1999-2003 Setsuo Arai All rights reserved.
このサイトの著作権は新井節男にあります。無断転載転写は固く禁じます。